制作過程

草履が出来るまで

ここでは草履の製造工程を追いかけながら1足の草履が完成するまでを紹介致します。

田植え

まずは、草履の材料となる稲藁を確保するための「田植え」作業です。毎年4月末から5月の初旬、農家の土田さんの協力の下、草履に最適な品種「豊国」を植えつけていきます。(平成28年度は2反分の田植えを行いました。)

竹皮集め

開発の手が届かない奥地・・・
竹皮職人たちは竹林に分け入って背負いカゴ一杯に竹皮を集めます。
乾燥させる前のカゴ一杯になった竹皮は登山用の装備以上の重さで、職人達の体力を奪います。
一歩間違えれば遭難の危険さえある山の中、そんな奥地だからこそ、草履の材料となる竹皮を収穫出来るのです。

薫蒸

集めた竹皮は数日天日で乾燥した後、室(むろ)と呼ばれる木製の小さな小屋に入れられ、そこでカビや虫の付着を防ぐための薫蒸処理を行います。
薫蒸処理が済むと、竹皮の束から斑点の少ないものだけを選び出し、草履用の竹皮として出荷されるのです。

稲刈り

10月、十分に育った事を確認したら丁寧に収穫していきます。通常、水田の収穫にはコンバインを使用します。
ですが、コンバインは藁を粉砕してしまうため、草履用の稲藁は手刈り、もしくはバインダーを使用して刈り取りを行います。草履用の稲藁は背丈が高いため倒伏しやすく、稲を起こしながらの稲刈り作業は丸一日になります。

杭掛け

収穫した稲藁を稲杭という丸太に掛けて米と稲藁を交互に乾燥させます。この作業により、稲藁から適度に水分が抜け、柔らかさと光沢が出ます。

脱穀

十分に水分が抜けた稲から米を収穫します。
現在では、多くの農家でコンバインを使用し、米のみを収穫しますが、軽部草履の本命はなんといっても稲藁!
ハーベスターを使用し、藁を傷つけないように慎重に脱穀作業を行います。残った藁は蔵に入れて11月初旬頃まで寝かせてから草履の材料として使用します。

竹皮仕分け

集められた竹皮の中で、草履の材料として適した極僅かな斑点の少ない竹皮。
軽部草履では、さらに竹皮草履が均一な色になるように材料の仕分けを行います。職人の目利きによって、一目では見分けがつかないような細かな色合いまでを見極めるのです。

節抜き

乾燥した稲藁から芯材である「節」を一本ずつ切り出していきます。この時、長さや太さを指の感覚で仕分けすることで材料に統一感が出ます。均一な材料を使用することで稲藁節草履はさらに美しく仕上がるのです。

竹皮裁断

色をそろえた竹の皮を、ぬるま湯に漬け、一晩寝かせた後、等間隔に釘を並べた「皮裂き器」に通して均一に裁断します。
水分が多すぎれば柔らかすぎて均一に裂けず、乾燥しすぎれば釘で竹皮の繊維が崩れて足触りが悪くなってしまいます。
水分の適量は職人は手で触れる事で確かめるのです。

草履編み

切り出した節をみごし(米の研ぎ汁)に一晩漬けて乾燥させた後、再びぬるま湯に潜らせ、柔らかくなった所で草履に編みこんでいきます。草履片方に使用される稲藁節は200~300本以上。熟練の職人でも1足の草履を編み上げるのに約90分の時間を要します。

天日干し

編み上げた草履は、軒先で自然の風と太陽光で乾燥させます。
特に、冬の時期の寒風で乾燥させた草履は「寒草履」は、艶が増してより美しい草履になります。

圧搾

編み上げた草履を乾燥させた後、金型に入れて高温に熱しながら油圧プレス機で圧搾します。この作業により、草履は硬く引き締まり、見た目の美しさだけでなく履きやすさも格段に良くなります。金型に挟み込む鉄板はガスで熱しますので作業場は常に高温になります。鉄板の温度は目分量で決められ、熟練の職人だけがその温度を肌で感じ、その日の気温や湿度によって微妙な調整が行われます。

加工

金型から取り出した草履を冷ました後、製品に加工します。製品加工は鼻緒を草履に挿し込む「地入れ」、底材を縫い付ける「底付け」、「接着」と複数の職人の手によって行われます。

完成

4月の田植えに始まり、草履の製品が仕上がるのは翌年の1月~2月と丸1年を要します。その間、多くの職人の手を渡り、全ての工程が手作業によって行われます。職人たちは技術と誇りにかけて毎年最高の草履を作り上げるべく、努力を欠かさないのです。